第41回 『恋味うどん』⑥
多重債務者です。
この作品に出てくる借金まみれの本屋・五味隆のキャラを作る上でのネタは、
自分自身です。
『他に仕事を持たず、脚本だけの収入で過ごしてみよう』
チャレンジという言葉の半分は、
失敗で出来ている事に気付きませんでした。
色々、気付くのが遅めでした。
決意した最初の年に、膨大な量のプロットを書きましたが、
プロットはシナリオに進もうとポシャろうと、
一銭にもなりません。
諸々、気付くのが遅めでした。
シナリオの本数だけならば、かなり書いたと思います。
興味があったり、組んでみたかったという理由の場合は、
安過ぎだなあと思いつつも引き受けました。
『今回はボランティアだけど、次に繋がると思ってさ』
『企画は通ってるも゛同然゛なので、先にシナリオ書いて下さい』
言われるままに、ホイホイ書いてたら、
けっこうな数の日の目を見ないシナリオが出来ました。
印税、何でしょう?
リンゼイ・ワグナーなら知ってます。
色々、気付くのが遅めでした。
家賃の更新、出産費用、日々の生活費。
人間は、生きてるだけで金かかる。
諸々、気付かないふりしてました。
頼れる味方は一部の友人と、金を貸してくれる業者の方々でした。
優しさに甘えていたら、
思い出よりも限度額がいっぱいのカードが増えました。
金貸しは怖いというイメージがありますが、
直接的ではないプレッシャーのかけ方などのテクニックには目を見張るものがある、
役所関係の方がずっと怖いです。
ある時、なけなしの千円を税金として納めようと電話したら、
そんな額を納められてもといった言葉が返ってきたので納めずにいたら、
封を開けにくい葉書が来ました。
どっちやねん!と思いました。
死んだ父親は、自分が貧しいくせに、ええかっこしぃなとこがあり、
乞食に金と服をあげて、
パンツ一枚で帰ってきた事があります。
金がない時ほど、人に奢りたがる面もありました。
その辺りの血は、受け継いでしまったようで、
俺も人に金を使うのが好きです。
よく『金より大事なものがある』みたいな事を言う人がいますが、
ほんまの貧乏人は、
口が裂けてもそんな事は言いません。
貧乏人は人をねたみます。ひねてます。こずるいです。こすっからしいです。
だからこそ、話を聞くのは面白いです。
さて。
俺はひねた貧乏人でありますが、
人に幸せになって欲しい気持ちもあります。
ぽん酢醤油がある家程度の幸せかは分かりませんが。
だから、甘っちょろいと言われても、
キャラにそのメッセージを託します。
風呂上がりのよな気分で、劇場を出て欲しいとも思っています。
我が身に照らし合わせて考えた結果です。
現実を生きるだけで充分しんどいですから、
映画館の中で、それと出た後くらいはと。
何にせよ、後悔は0です。
この仕事を続ける以上は、
これくらいの負の枷があった方がいいです。
ネタも妬みも増えますし。
本気と書いてマジと読む。
生きると書いてネタと読む。
それでいいやと思うのです。
宝くじ当たれ!
千円で確変来い!
毎日が神頼み。
と、ここまで書いて気付きました。
そういう状況から抜け出す為に、
介護めいた仕事も始めたのですが、
これはこれで薄給なので、
某コムスンの社長みたく、自由に使える金が出来ず、
コムタンスープを飲むのも、
コニタンのプロマイドを買うにも一苦労するほど、
まだまだ大変な毎日が続く事に。
一生大変。
今日は、セーフティゾーンの『マスカレード』を聴きながら書きました。
(写真は2006年度ピンク大賞で脚本賞を受賞した時のヒトコマ)