処女。をプロデュース
1998年、初夏。
山内大輔君から連絡がありました。
「デビュー作を撮るから手伝ってほしい」
「超低予算のVシネマで自主映画に近い体制だから、助監督お願い。あと・・・出演も」
今思えば、これが億単位の映画から低予算の世界への転落の瞬間でした。
もしも自分の人生をやり直すことができるなら、迷わずこの地点からやり直します。
「出演も」という言葉には伏線がありました。
その頃の僕は制作部をお休みして、アメリカに行ったり、シナリオを書いたり、
役者でもないのに舞台に立ったりしていたのです。
舞台を観に来た山内君は、他の上手い役者さんそっちのけで、なぜか僕をベタ誉めして帰っていきました。
おそらく頭がイカれていたのでしょう。
とは言え、久々に現場の空気を吸いたかったし、当時仲良かった山内君のデビューを応援したいという気持ちから、あまり深く考えずにOKしました。
あっ、今も仲いいです。多分。
この作品=『女の子の部屋 お手入れ生中継!!』は、キャストがたったの3人。
カメラも部屋の中からほとんど出ない、確かに激安な作りでした。
お話は以下の通り。
可愛いけど奥手でバージンの女の子に、ようやく理想的な彼氏ができます。
その彼が初めて部屋に来ることになりました。
経験豊富な妹に茶々を入れられながらも、理想の初体験を迎えるべく、
彼女はせっせせっせとカラダのお手入れに励みます。
エロVシネマではありますが、絡みは最後の初体験シーンしかなく、
脱毛などのお手入れ描写が延々と続くひたすらマニアックな展開でした。
山内君は大学の卒業制作で撮ったスプラッター映画がゆうばりファンタで高く評価され、監督デビューを果たした人です。
それがこんな頭の悪い企画を撮らされ、さぞかし不本意だろうと思いきや、
『お手入れ生中継!!』は本人の企画と聞いてひっくり返りました。
彼曰く、「女子が腋毛を毛抜きで抜く時に浮かべる苦悶の表情にたまらなく興奮を覚える男子向け」に作った作品だそうです。
爛々と瞳を輝かせ熱く語る山内君の姿を見て、僕のテンションはどんどん落ちていきました。
さて、あらすじを読んでお分かりのように、出てくる役は「ヒロイン=処女のコ」と「妹」と「理想の彼氏」だけです。
ヒロインは当時ヌードグラビアで人気があった方でした。
妹役は監督の友達の一般人でしたが可愛い方でした。
理想の彼氏役が僕でした。
誤植ではありません。
理想の彼氏役が僕でした。
案の定、かなりバッド・テイストな初体験シーンとなりました。
もう少しこの話をしたいのですが、一向にタケホラ君が出てくる気配がないので、ひとまず次回に続きます。
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