セックスと演技とキネシオテープ
『女の子の部屋 お手入れ生中継!!』は山内監督の友人宅で2日撮り。
スタッフ全員と、主役以外のキャストは監督の友人・知人ばかりで、まさに自主映画状態でした。
現場の移動もなくお手入れシーンばかりだったのに、初日からなぜか徹夜状態。
僕は助監督でしたが、監督がこだわっているポイントがまったく理解できませんでした。
脱毛クリームを腕に塗りたくる場面になると、僕らは監督と主演女優さんだけを残して部屋の外に出ました。
監督は自らカメラを持ち、ただのお手入れシーンをまるでハメ撮りでもするかのように撮り始めました。
こんな大人にはなりたくないなと思いました。
主役のコもうんざりしたのでしょう。
僕らのケアが行き届かず、時間を追うごとに彼女の機嫌は悪くなっていきました。
山内監督が女優に嫌われるのは、この時からの恒例行事です。
最後の初体験シーンを撮り始める頃には、2日目のてっぺんを越えて3日目の明け方になってました。
いよいよ僕もVシネ男優デビュー。
作品のためなら、脱ぐのに抵抗はありませんでした。
乳首も乳輪もお見せする覚悟はできていました。
Vシネマやピンク映画はAVとは違って疑似本番です。
生まれて初めて前バリというものを装着する瞬間がやってきました。
しかし前バリの仕方などわかりませんし、教えてくれる人もいません。
しょうがないので、昔『笑っていいとも!』で時任三郎さんが前バリの話をしていたのを思い出しながら、キネシオテープとガーゼを切って自己流で作りました。
さんざん苦労したのに、監督に「前バリ、でかすぎるんじゃないの?」と言われ、殺意を覚えました。
ヒロインの初体験シーンが、奇しくも僕の絡み初体験となりました。
衣装は、後々僕の定番ファッションとなる白ブリーフ一丁でした。
前フリも台詞もなく、いきなり絡みが始まりました。
もはや演技もクソもありません。
はじめてのチュウをした瞬間、相手が不機嫌になったのが分かりました。
そこまでの不満を爆発させたのか、監督や僕に文句を言い始めました。
全く息が合わず、肌の温もりも感じない。
竹洞組の『森鬼』で真冬の樹海で絡んだ時以上に極寒の絡みでした。
いや、樹海の方が寒かったな。すみません、ウソつきました。
冷えきっているこちらの様子に全く気づかないのか、山内監督は悪趣味な演出を続けました。
最後に撮ったカットは、彼女に微笑みかけた時、僕の歯に陰毛が挟まっているというものでした。
その毛は、僕が自分の脇毛を切って洗って使いました。
・・・どこが「理想の彼氏」やねん。
「サーモン=変態」路線はここで決まったようなものです。
今後どんなに僕や山内君がビッグになったとしても、デビュー作が『お手入れ生中継!!』である事実は、菊池桃子のデビュー作が『パンツの穴』である以上に重い十字架となってのしかかるでしょう。
後日、この作品の編集マンが僕の映像を見て本物の知○遅れだと思ったそうです。
そして主演女優の事務所からは大クレームが入りましたが、
山内監督は自慢の金髪ロン毛をかき上げてヘラヘラ笑うだけでした。
そんな強心臓が買われたのか、翌1999年から2000年にかけて、
山内監督はスプラッターVシネマを7本も連発することになります。
その一連のシリーズにずっと助監督でついていたのが、城定秀夫氏でした。
新キャラが出てきたところで、次回に続きます。
タケホラ君と再会するまで、あと数回。
(写真は金髪を切って真人間に近づいた近年の山内監督)
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